【イベント案内】ネットと社会運動について話します

1月に都内にオープンしたQueer Space Tokyoにて3月28日(土)にネットと社会運動をテーマに話すことになりました。よければぜひお越しください。
遠藤まめた 2026.03.09
誰でも

1月に都内にオープンしたQueer Space Tokyoにて3月28日(土)にネットと社会運動をテーマに話すことになりました。

ネットと社会運動 LGBTQ+運動を進めるためのネット活用の利点と弱点

ネットと社会運動 LGBTQ+運動を進めるためのネット活用の利点と弱点

トランスのアクティビストとして2005年頃から活動を始めた自分にとっては、活動の当初からインターネットは欠かせない存在でした。昔は牧歌的なところもあったインターネット、運動を大きくしたりエンパワメントの場でもあったツールが、今や「組織化」に使うのにも限界が出てきているが、かといって今でも効力を失ったわけではない。道具としてどのような可能性と脆弱性があって、いまだから見える「対面でのアクション」の効力とは何だったのか、といった話がみなさんとできたらと思っています。

(都内対面開催のイベントなので、当日話すことはメルマガで後日出せる範囲でまた出します)。

クラウド型のアクションが全盛だった頃

今よりも、ネットを使った動員が牧歌的にできた時代がありました。あれは20歳だった2006年の話。その頃、もっとも使われていたSNS「mixi」で、当時大阪府議会議員だった尾辻かな子さんたちが5月17日の国際反ホモフォビアの日にあわせて「ホモフォビアにNO」という街頭アクションをやろうとしているのを発見した私は、mixiのプロフィール画像をみんなレインボーにしたら面白いんじゃん、と書き込んだところ、100人以上が呼びかけに応じて、みんなレインボーだらけになるという凄まじい光景を目にしました。

その頃は、LGBTコミュニティの知り合いも1桁台しかおらず、どこの誰ともわからない若者のイタズラのような書き込みにここまで影響力があると思わず、衝撃でした。

その翌年、尾辻さんは国政に挑み、5月17日はアクション不在の空白日になりそうでした。「もったいないから」という理由で、私や友人は先人の活動を勝手に「オキュパイ」することにしました。前年に、レインボーカレッジという学生集団が発足し、LGBT当事者の同世代とたくさん出会っていたのでこのときには協力してくれる知人友人がいました。前年使われていた国際反ホモフォビアの日は分かりにくいので、勝手に「多様な性にYESの日」に改名しました。反対の反対って、まどろっこしいから、賛成ということにしました(賛否両論ありました)。新宿駅前で何かやりたかったけど、街頭でスピーチする技能はなかったので、mixiでみんなにメッセージを集めて読むことにしました。

「あなたが書いてくれたメッセージを街頭で全部読み上げます」といったら、一晩で100通近く集まって大変なことになりました。当日一緒にやろうと呼びかけたら、大阪でもやりたいと声をかけてくれる学生がいて、初回なのに大阪と東京での開催になりました。YouTubeで撮影してくれる人もいて、数年経ったら各地にアクションが拡散しており、仲間が増えてとにかく楽しかった。学生にやれるんだから、全国統一でノウハウと代読メッセージの「台本」があるんだから、度胸があれば、いろんな人が活動できます。いわゆる「クラウド型」、ネットで呼びかけてさまざまなリソースを動員するアクションの典型的な事例だったと思います。

その後、アクションは手上げ式で全国10都市以上に広まり、やり方もメッセージ展などとご当地アレンジされていきました。2010年代前半は地方でのプライドパレードも乏しく、特に地方在住の人たちにはかなり刺激的だったんじゃないかと思います。人生が変わったとか、自己肯定できたとか、見物に来たつもりがマイクを握ってしまい、その後なぜかアクティビスト人生を歩むはめになった人もいました。

この頃は、荒らしのメッセージもほとんどなくて、クラウド型のアクティビズムにとって良い時代だったのだと思います。善意に基づいていて、飛び入り参加で誰かがマイクで上手に話しているけれど、その人が誰なのかはみんな知らないとか、スペイン語で話している人がいるけれど何をいっているか誰にもわからないとか(笑)それでもまぁいいかという雰囲気。

その後、5月17日の全国アクションの呼びかけは、地方でのプライドパレード勃興に伴い2023年にクローズしますが、それはクラウド型のアクティビズムが難しくなった転換期でもありました。メッセージを募集したところで、悪意コメントが殺到するかもしれない。なりすましがくるかもしれない。そんな中で、責任が負えなくなっていったのもあります。仲間たちと話し合い、「時代が変わったし、一つのキャンペーンが果たすべき役割を終えた」と、この運動は円満で解散しました。

ネットのアクティビズムは角を曲がれない?

以上は私の活動の原体験、もとい、中年にさしかかった活動家の昔話ですが、もう少し眼差しを広げて論じてみます。

2007年から2010年代前半にかけて「多様な性にYES」のアクションが盛り上がっていた頃、比べるのはおこがましいですが、2010年には「アラブの春」、2011年には「オキュパイ・ウォール・ストリート」の運動が盛り上がっていました。多くの人がSNSを通じて運動に参加し、アラブの諸国ではたくさんの市民が催涙ガスを浴び、それでも中長期的には起こしたい変化を生み出すことができず、これはなぜだろうという疑問があがりました。

ゼイナップ・トゥフェックチーは、クラウド型の市民運動は急激に運動が大きくなりすぎることによって、むしろ新たな状況がうまれた際に誰かがリーダーシップをとって相手型と交渉したり、みんなが納得する結論を生み出すことなどが難しいということを論じています。キング牧師の時代にたくさんの運動の集大成である10万人がデモ行進することと、ハッシュタグで集まったバラバラの10万人がデモ行進するのでは、明らかに後者の方が運動を崩壊させやすいです。

日本ではどうだろう、と考えると、典型的なクラウド型の市民運動であるフラワーデモは、刑法性犯罪の100年ぶりの改正を後押しすることができたし、人々の集結を政治的な力に変換することができた良い事例だと思います。もちろん地道なロビイングあっての成果ですが、2010年代後半になってサバイバーの語りに人々が触れる機会が増えたことが後押しになったことは間違いないでしょう。

一方で、トゥフェックチーがいうような場面も想起できます。たくさんの人がトランスジェンダーの権利についてSNSで議論するけど、具体的なアウトカムをいつどうやって引き出したいのか、たくさんの人が協働・連帯できるような戦略設計が柔軟にできるのかは謎です。SNSで見かけたヘイトに対して反論しないこと、注目を与えないことが現状では最も良い対処法であるとデジタルヘイト監視センターは提唱しています。これが科学的に正しかったとしても、「じゃ、それで行こう」と合意形成することはきわめて難しいでしょう。

と、なんだか壮大になってきたので、いったんこの辺までにします。

その後は講座でお話をするので、よければぜひお越しください(都内対面開催のイベントなので、当日話すことはメルマガで後日出せる範囲でまた出します)。

無料で「遠藤まめたのニュースレター」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら